大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所 昭和45年(わ)130号 判決

本籍

福岡市南区高宮四丁目三五五番地

住居

同 市中央区清川一丁目一三街区九号

パチンコ店等経営

佐々木静子

大正三年八月一〇日生

本籍

福岡県甘木市大字甘木一、五一一番地

住居

福岡市中央区清川二丁目一〇街区一二号

不二ビル一〇一号

パチンコ店等経営

鶴川佐敏

昭和四年二月九日生

右両名に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官松田達生出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人佐々木静子を徴役八月および罰金八〇〇万円に、被告人鶴川佐敏を徴役八月および罰金三〇〇万円に処する。

被告人らにおいてその罰金を完納することができないときは被告人佐々木静子につき金二万円を、被告人鶴川佐敏につき金一万円を、それぞれ一日に換算した期間その被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から被告人両名に対しいずれも三年間それぞれの徴役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人佐々木静子、同鶴川佐敏は福岡市中央区天神二丁目においてパチンコ店福岡ポンナミ会館を、同市博多区博多駅前一丁目において同博多ポンナミ会館を、北九州市小倉船頭町において同小倉ポンナミ会館を、福岡市中央区清川二丁目において同伴旅館ホテル「エデン」をそれぞれ共同経営しているものであるが、共謀のうえ、それぞれの所得税を免れようと企て、売上げの一部を除外して偽りの記帳をなすとともに架空給料を計上するなどし、それによって得た収入を架空人名義の預金とするなどの不正の方法によりその所得の一部を秘匿したうえ、

第一、昭和四一年度分の被告人佐々木の所得金額は四、七〇四万四、五七九円で、これに対する正規の所得税額は二、六五八万三、一〇〇円であり、同年分の被告人鶴川の所得金額は一、九七四万、〇七二円で、これに対する正規の所得税額は九一八万七、一〇〇円であったのに、昭和四二年三月一五日福岡市中央区天神四丁目一街区三七号所在の所轄福岡税務署において同税務署長に対し、別表の(一)欄記載のとおりの虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告人佐々木においては、右正当所得税額と申告所得税額との差額一、二四二万六、一〇〇円を、被告人鶴川においては右同差額四三三万八、一〇〇円をそれぞれほ脱し

第二、昭和四二年分の被告人佐々木の所得金額は三、九八六万一、八七四円でこれに対する正規の所得税額は二、一七五万九、四〇〇円であり、同年分の被告人鶴川の所得金額は一、七〇〇万八、二五三円でこれに対する正規の所得税額は七六二万八、九〇〇円であったのに、昭和四三年三月一五日、前記所轄福岡税務所において同税務署長に対し、別表の(二)欄記載のとおりの虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告人佐々木においては右正当所得税額と申告所得税額との差額一、四一二万八、三〇〇円を、被告人鶴川においては右同差額五二六万二、一〇〇円をそれぞれほ脱し

第三、昭和四三年度分の被告人佐々木の所得金額は三、五四六万六、八一六円で、これに対する正規の所得税額は一、八八八万二、三〇〇円であり、同年分の被告人鶴川の所得金額は、一、五〇九万三、六〇六円でこれに対する正規の所得税額は六五四万七、六〇〇円であったのに、昭和四四年三月一五日前記所轄福岡税務署において、同税務署長に対し、別表(三)欄記載のとおりの虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告人佐々木においては、右正当所得税額と申告所得税額との差額五七五万八、六〇〇円を、被告人鶴川においては右同差額二一六万二、一〇〇円をそれぞれほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示事実につき

一、第一回、第二回、第一三回各公判調書中の被告人佐々木静子、同鶴川佐敏の各供述部分

一、第一一回、第一二回各公判調書中の被告人鶴川佐敏の各供述部分

一、第一三回公判調書中の証人衛藤光宣の供述部分

一、被告人佐々木静子の検察官に対する供述調書二通および大蔵事務官に対する質問てん末書五通

一、被告人鶴川佐敏の検察官に対する供述調書五通および大蔵事務官に対する質問てん末書九通

一、被告佐々木静子、同鶴川佐敏作成の上申書七通

一、押収した覚書綴一綴(昭和四五年押第一二一号の六一)

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官衛藤光宣作成の昭和四五年二月二四日付脱税額計算書二通(自昭和四一年一月一日至同年一二月三一日、被告人佐々木静子の分および被告人鶴川佐敏の分)

一、押収した総勘定元帳一冊(同号の二八)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官衛藤光宣作成の昭和四五年二月二四日付脱税額計算書二通(自昭和四二年一月一日至同年一二月三一日、被告人佐々木静子の分および被告人鶴川佐敏の分)

一、押収した総勘定元帳一冊(同号の二九)

判示第三の事実につき

一、大蔵事務官衛藤光宣作成の昭和四五年二月一〇日付脱税額計算書二通(自昭和四三年一月一日至同年一二月三一日、被告人佐々木静子の分および被告人鶴川佐敏の分)

一、押収した総勘定元帳一冊(同号の六三)

(法令の適用)

被告人両名の第一、第二、第三の各所為は、いずれも所得税法二三八条、刑法六〇条に該当するので徴役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、徴役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人佐々木を徴役八月および罰金八〇〇万円に、被告人鶴川を徴役八月および罰金三〇〇万円にそれぞれ処し、被告人らにおいて右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により被告人佐々木につき金二万円を、被告人鶴川につき金一万円をそれぞれ一日に換算した期間その被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用して被告人両名に対し、この裁判の確定した日からいずれも三年間それぞれの徴役刑の執行を猶予し、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条に従って被告人両名に連帯して負担させることとする。

よって主文のとおり判決する。

昭和四八年一一月二〇日

(裁判長裁判官 山本茂 裁判官 知念義光 裁判官 山浦征雄)

別表

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例